ミケ日記

2004年5、6月


6月21日 月曜日 台風

 梅雨台風は能登の沖を過ぎていく。ベランダの下の川岸の草が怖いくらい茂ってどうにかしなければと思うが、台風の日に、足を滑らしでもしたら、ニュースになってしまうから自重する。

 何かし忘れたようなきぶんでろくがつもなかばをすぎた。徳島での三日間はたのしかった。一番札所からほんの少しでもお遍路に見えてくるものがどんなに広いか思いやられた。すぎてしまったものは何処へ行くのだろう。なつかしい顔、はじめての顔、本当に見たのか。読んだ本もどこへいくかわからないが、思い出と夢はどうちがうのか。わからない。

 加藤典洋の「テクストから遠く離れて」を読む。おもしろい。理解するというのはなんとこころやすまることだろう。結局人間はこのわけのわからない世界でなにかわかるものが欲しくて理論というものをつくるのではないかな。


5月26日 水曜日 晴れ

 海芋の花も枯れてさびしい妖怪のようだ。ベランダのバラだけが静かに咲きつぎ、散りついでいる。

 北朝鮮に拉致されていた方々の子供たち五人が帰国した。ニュースはそれでもちきり。そっとしておいてあげればいいのに。

 拉致被害者の家族会の政府不信はよくわかる。大きな支援の約束と引き換えの帰国、この時期に突然にそれをするのは、国民の目を年金法案(閣僚や首相自身の未納問題)等への不審からそらすためではないか。首相の保身のために利用されたのではないかという印象はぬぐえない。


5月23日 日曜日 晴れ

 今日の夕食は団塊世代向けの旅行雑誌の取材ディナーに呼ばれている。その前に散歩に出かけたら意外に時間をとってしまって大慌てで家をでた。片山津の温泉街から離れた丘の上のリゾート・ホテルだ。ついたらすっかり眠くなってしまって何を話したか覚えていない。しかしお料理はすずしげな夏料理で、味付けも上品。特に生雲丹を自然薯のうえにゼリー寄せにしたものはほのかな青柚子の風味も初夏らしくさすが板前料理という一品だった。ひたすらたいらげてきた。きっと食べている写真ばかり載ることだろうな。


5月22日土曜日曇り

 黄金の五月もすでに半ばをすぎてしまった。なかなか日記を書く機会がない。月の初めはパソコンの設定やらおるかの風邪やらで夏落ち葉のようにどこかへ消えてしまった。アー専用のパソコンがほしい。オットセイが出かけた隙に久しぶりに日記を開く。

 山代温泉へ抜ける道のゴルフ場の近くで雉をみた。以前は家の近くでもしばしば見ることが出来たのに最近は鳴き声も聞こえないので心配していたが、絶滅したのでもないようだ。チラッとこちらを見る目つきが鋭い。

   蛇食うと聞けばおそろし雉の声  芭蕉

 まだ若い雄だった。はやく番をみつけて増えてくれたまえ。

 深夜に不思議な影を見た。尻尾がふさふさだからきっと狐だ。大きかった。肉食の獣が生きていけるということは山に小動物がかなりいるということだろう。山林に人の手が回らなくなった分自然が回復しているのだろうか。それとも山奥にいられなくなって人里近く出てくるようになったのだろうか。犬族特有のせかせかした足取りで闇に消えてゆく後姿には一抹の哀愁をかんじた(出くわしたら大変)。


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