ミケ日記

2006年5月


5月31日 水曜日 晴れ

 朝から電話の多い一日だった。そのうちいくつかは株とか旅行ツアーとかの誘いで「お金ありません」のひとことですぐ終わる。電話帳に氏名住所を載せるのも考え物という気がしてくる。すくなくとも住所の番地まで載せるのはやめた方が良いかもしれない。月末なので多かったんだろうか。

ともあれ今年の五月ももう終わり。あぁ、もう行ってしまうのか、緑と黄金の季節よ。木々の葉もすっかり茂って小鳥が見えにくくなってしまった。朝は不如帰やアカショウビンがとても近くで鳴いていたが。


5月29日 土曜日 曇り時々晴れ

 オットセイは初めてクラス会というものに参加すべく武生(現在、越前市)に出かけた。おるかは「一人は気楽だ!」と、大音響でモーツァルトを鳴らし、オットセイの嫌いなリゾットを作って食べていた。

 夜になって戻ったオットセイは「別の学年の人もいて200人くらいのなかで、はっきり肥満と見える人が一人だけだったのには、感心した」という。何十年ぶりかのクラス会の感想としては客観的な観察である。


5月24日 水曜日

 我輩はミケ、猫である。二三日家を空けて、川下の別荘で気分転換をした。夕方、聞きなれた声が「ミーケー」「ニャー」と怒鳴っているのが聞こえたので、でてみると、おるかが探しに来ていた。人間のくせにニャーニャー言いながら歩き回っている。実に滑稽である。近づいてゆくと「おお!ミケ!あいかわらずシッポが長いな!」と言いながら抱き上げて家に連れ帰ってくれた。

 梳き櫛でダニをチェックしながら、「こんなに良い家があるのにどうしてどこかに行っちゃうんだ?」などとひとしきりゴタゴタしゃべる。まったく凡人というのはしょうがない。芭蕉も書いているではないか「ヘンウンの風に誘われ、漂泊の思い止まず云々」と。俳句を齧っているなら、多少は旅に誘われる詩人の心が分かっても良いはずではないか?金子兜太に「定住漂泊」なる言葉がある。それこそまさに我輩の言わんとするところである。


5月19日 金曜日 小雨

 午後電話があって、おおさかの蒲鉾やさんのパンフレット用に器を見に来るという。全国の料亭やホテルむけに三万部も作るというそのパンフレットには中国の古陶磁の写真も載っている。九谷焼美術館は開かれた美術館をめざしているせいか、そのパンフレットに収蔵品の古九谷を貸し出すらしい。さすがにその上に盛り付けはできないので、現代作家の器に盛って見ようという趣向らしい。我輩はてっきり蒲鉾屋さんがいらっしゃるのだと思ってたのしみにしていたが、お見えになったのは、宣伝会社のひとだった。当然と言えば当然である。あっというまに二点ほど選んで次の家へ回る。「ここ圏外ですな〜」というので、おるかがそれくらいで驚くなとばかり「 テレビだってうつりませんよ。NHKの難受信地域で受信料払わなくても良いんですから」とこたえると「ゑ”−−−っ!」と大阪人らしく派手に驚いてくれた。


5月17日 水曜日

 大阪ドームの展示会の荷物を発送。専用の車が来てくれて何かと便利だ。おるかは風邪気味らしい。我輩が寝ていると、なんだかんだと触りにきてきて、じつに五月蝿い。


5月15日 月曜日 曇り時々小雨

 ホームページの表紙更新。

 午前中に九州からのお客様。古くからの知り合いのO氏とそのお友達ご一行である。真っ白い麻服のダブルの上下という映画の中でしか見たことのないようなスタイルをビシッと決めたO氏。車で魯山人旧居などめぐって金沢までむかわれるとのこと。

 おるかはそのあと 大急ぎで原稿を仕上げ、ネット句会の句を作っていた。何事も泥縄なやつだ。オットセイは人疲れとかで寝込んだ。


5月14日 日曜日

 おるかは遺産相続のために苦労をしなければならないお金持ちのための小冊子にエッセーとイラストを描いている。イラストは花と猫というお決まりの主題なのですぐ出来上がったが、文章の方は,寄せ集めの纏まりのないものになってしまっている。何度か読み直して勘違いでかなり短く書いていたことにやっと気づいた。しめきりはほんとは10日だったのだそうだが。どうする、おるか。


5月9日 火曜日

裏庭の海老根が今年は沢山咲いた。シブイ花だが味わいがある。蘭は花の咲いている期間が長い。隣に白糸草も咲いた。こちらも今年は少し増えてくれた。目立たない花だが、良い香がする。

 おるかはだぶだぶの服で花の周りをうろついていて蜂に背中を刺された。小さな黒い蜂だ。「なぜか蜂には刺されるんだ」と落ち着いている。「スズメバチにだって二回刺されたもんね。経験豊富なの」と、つまらないことを自慢していた。蜂に刺されると、痛いことは痛いが「どこかフワーッとしたような気分になるの」と言う。変な趣味な奴だ。


5月7日 日曜日 雨

我輩はミケ、猫である。連休も終わりの日曜日だ。と言った所で、この家の連中は、国民の祝日はもっぱら家で仕事しているのだからあまりピンとこない。おるかは京都は宇治の料亭さんの新装なった玄関にかけるという葉書大の絵を描いている。玄関の仰々しいのはダサいものだが、こちらの玄関はとてもシブイらしい。慣れない高級和紙の滲み具合に「おお!」と感動している。「もっと書道を練習しなきゃ」と相変わらず泥縄である。こんなので料亭さん大丈夫なのでしょうか。


5月5日 金曜日 快晴

 子供の日。子供という字が差別的で、どうのこうのという話を聞いた。差別にかかわる用語はもちろん考慮すべきだが、あまりきびしくされると窮屈なものだ。飯島晴子の名句にもある「○○○縞」が使えないとなるとなんだかなー。古い物の名前には今は差別語とされることばがけっこうつかわれている。いざり機なんてなんと言ったらいいんだ。さて閑話休題

 今日おるかとオットセイは加賀から福井県へ向う海岸にある娯楽施設「芝政」までホワイト・タイガーの赤ちゃんを見に行った。我輩と言うものがありながら浮気な連中である。案の定ものすごい人出で駐車のためにかけた時間のほうがホワイト・タイガーの檻の前を通る時間より長いくらいだったらしい。それでもおるかは「一目千両の大スターだったわ〜ん」とうっとりしている。白フクロウもいたそうだ。「写真バチバチとられてかわいそうだった」「殺風景な折の中にコロンと寝ていてさびしそう。赤ちゃんなのに」と同情していたが、それを見に行く人間がいるからそういうことになるのだ。


5月2日 火曜日 薄曇 

 大型連休の中の貴重な平日である。おるかは郵便局や図書館に行ったり、お金の振込みしたり駆け回っていた。さいごに苗屋さんで風知草380円を買ってすっからかんになったという。「さっぱりした気分だ」と言いながら風知草の植え付けをしていた。涼しげな草だ。


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